1.ピア・メンタリングとは

メンタリングは、知識や経験の豊かなメンター(助言者)が、未熟なメンティ(相談者)に対して、定期的、継続的な面談を通して環境、仕事への適応支援、課題解決や悩みの解消、人間関係の築き方、意欲促進、キャリア形成や心理・社会的な成長など様々な支援を行うことをいいます。また、ピアは、仲間を意味します。
従って、ピア・メンタリングとは、主体的な成長、相互育成を目的として対等な立場(ピア)の同僚同士が、互いに学び合い、支え合うための「グループ面談」を「定期的に実施」することで共に成長する取り組みです。研修での学びの実践・継続支援のほか、自走して成長しつづける組織づくりに効果的です。
また、社内リソースだけで継続的な学習機会を提供でき、効果・効率的な育成スキームを構築。様々な階層で実施することで、コストをかけず成長や相互育成文化の醸成できるため、育成コストの効率化にも貢献します。
2.ピア・メンタリングが効果的な理由

ピア・メンタリングが効果的な理由を確認しておきましょう。
①決めたことの実践や継続の強制力につながる
決めたことを継続するのは難しいことです。しかし、仲間と一緒に成長していくという機会が励みになるとともに、相互確認を行う際に、何も取り組んでいない、結果が出ていないというのは恥ずかしいという思いが、いい意味での強制力にもなるため、決めたことの実践、継続につながります。
②行動や継続のモチベーションとなる
一度や二度の実践は、気持ちでなんとかなりますが、物事を継続するためには、モチベーションとなる成功体験が必要です。①で確認したように、半ば強制的に実践、継続することで変化や成果を実感し、更なる実践、継続へのモチベーションとなります。
また、仕事上でやりがいを感じるための3つの「感」を知っているでしょうか。それは、「達成感」「成長感」「存在感」です。存在感というのは、自分が誰かや組織の役に立てている、貢献できていると感じられることを指します。
決めたことに対する成功体験が、達成感や成長感を満たし、共有する取り組み内容やヒントが仲間から承認されることで、役に立てているという存在感も感じることができます。ピアメンタリングでは、これらを定期的に感じられる機会が訪れるため、行動や継続のモチベーションとなります。
③自己効力感、自己肯定感の向上で自信がつき、更なる行動、継続につながる
実践、継続による結果や成果を確認することで、自分はできるんだと認識できます。更に、ピア・メンタリングを始める前の自分を振り返って比較することで成長を実感できるため、自己効力感や自己肯定感の向上につながります。
3.活用目的

ピア・メンタリングの主な実施目的を紹介します。
①研修フォローアップ
研修後、何もフォローがなければ実践、継続し、力にできるのは受講者の2割程度です。研修を受講者全員、会社にとって意味ある投資にするためには、後追いが欠かせません。しかし、フォローアップ研修を実施するのは時間やコスト的に難しいという企業もあります。また、単にリマインドをかけるだけでは、瞬間的に意識が上がるだけで、結果としてあまり変わりません。
そこで、お勧めなのが、受講者同士でのピア・メンタリングにて実践・結果を定期的に共有、学び合う、PDCAを確認し合う機会を定期的に設けることです。いまや、生成AIに個別相談という形式もありますが、それは個人の気付き、行動、継続にはつながるかもしれませんが、効果のところで確認した1と2の効果は得ることはできません。
一方、ピア・メンタリングであれば、共有し合うことで強制力が働くのはもちろん、同じ研修を受けた他メンバーの取り組み内容や結果の定期的な確認が、新たな気付きや学びにつながり、研修効果の増幅、個人・全体の成長を底上げと相乗効果につながります。
②PDCAの習慣化
日常の業務において、目的、目標、ゴール、取り組みを設定し、実践、結果を振り返り、ピア・メンタリングでヒントを得て、次につなげるサイクルを繰り返すことでPDCAの効果を体感できます。その効果を感じながら、繰り返すことでPDCAが習慣となり、自走して成長し続ける人材に変わっていきます。
③横のつながり強化による離職防止
2026年4月27日の日経新聞15面「退職代行にすがる社員」の記事の中に、このような記載がありました。要約すると「退職代行の利用が広がった背景に、職場内の人間関係希薄化、同僚らとの横のつながりの弱まり、コミュニケーションが上司との間に集中。そのため、上司との関係悪化が一気に退職につながる。上司以外とのコミュニケーション機会、横のつながりなどネットワーク再構築やガス抜きの仕組みが必要」という内容です。
様々な部署のメンバーでグループを構成し、定期的・継続的にピア・メンタリングを実施することで、自然に横のつながりを強化することができるため、新入社員や若手社員の離職防止の一助となります。
④成長・相互育成文化の醸成
リモートワークなど働き方の多様化、社内コミュニケーションの接点減少、上司のプレイングマネジャーの常態化などから、一人ひとり丁寧に育成する時間は取りづらくなっています。
そのため、会社や上司が育成のために骨を折るのではなく、従業員一人ひとりが成長・相互育成の意欲を持って活動することで、自ら成長していく組織が今後目指すべき姿となります。
ピア・メンタリングを継続することで、成長実感や存在感を感じながら、成功体験を積み、PDCAを自ら回すことで成長する、ピア・メンタリングで相互にいい影響を与え合う経験から、相互育成が当たり前という成長・相互育成文化の醸成につながります。
4.ピア・メンタリング実施の注意点

メンター制度は、「斜めの組み合わせでペアを作って、後はペアに任せて実施」と体裁だけ整えて実施すると、形骸化したり、効果が出なくて1、2年で中止に追い込まれるケースも多くあります。
同様に、ピア・メンタリングも、ただ「グループで集まって取り組みや結果を共有する機会を作る」だけだと、うまくいきません。ピア・メンタリングの意義や効果の理解、ピア・メンタリング時間の効果を最大化するための仕掛けがなければ、誰もが仕事を抱えて忙しい中、丁寧に運用されないからです。
従って、実施する際は、最低限、以下の3点は実施することがお勧めです。
・会社が事前に導入目的や全体像を共有する。
・ピア・メンタリング当日の進め方を落とし込む
・口頭だけで抽象的なものにならないよう、後で確認・後追いができるよう活用ツールを提供する
この3点をおさえた上で、後は実際に行った後に振り返りを行い、自社にあった最も効果的なピアメンタリングの方法を確立していきましょう。
いずれにしても、外部に依頼することなく、社内でコストをかけることなく従業員、組織の成長につなげることができる有効な取り組みです。最初からうまくいく、効果が出ると思わずに、PDCAを回しながらピア・メンタリングを社内に浸透させていきましょう。
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