NEWS

コラム【経営】

質へのこだわりか費用対効果か、基準を明示せよ

1.「人によって違う」は経営問題

個性の話ではありません。個性、価値観、そういったものは、違って当然、それぞれを尊重するものです。

ここで伝えたいのは、仕事におけるアウトプットに関することです。同じ作業をする、同じアウトプットを出すにしても、人によって結果の質やかかる時間が異なります。何を当たり前のことをと思うなかれ、経営視点で見ると大きな問題です。

「生産性に関わる」「質にかかわる」のみならず、「従業員のモチベ―ション」「人間関係」など経営全般に影響を及ぼすからです。



2.3DCGアーティストTELYUKAを見て思ったこと



 2020年5月24日(日)の情熱大陸は、3DCGアーティストTELYUKAに関する取材でした。TELYUKAは夫TELと妻YUKAからなるアーティストで、永遠の17歳 3DCG女子高生のSAYAを展開しています。
 SAYAは、見た目はほぼ人間で、CGと気付かないぐらいの精度でした。番組では、AIと音声を導入し、コミュニケーションを取れるようになったSAYAが高校生とコミュニケーションを取る機会に関して取材されていたのですが、その中で興味深かったのは、そのための準備におけるTELとYUKAの会話です。それは、経営や育成における意識ポイントと同じ点があったからです。

 その会話は、高校生にSAYAとコミュニケーションを取ってもらうにあたり、奥さんがSAYAの微笑みをより可愛くと時間をかけて作り込みをしている場面でした。

夫「ある程度のところで止めとかないと。正直一回しか使わない素材だから」
妻「ああ、まあね」
夫「あーっていう前に過ぎ去っちゃうよ。何回もループして見るものじゃ ないので。
そこは割り切って考えないと。間に合わせないと どっかで。
逆にやったはいいけどタイムオーバーで入れられませんでしたのほうが辛いと思うので」

 私としては、作り込む奥さんの気持ちに、とても共感するところがありました。例えば、研修コンテンツを構築する際、既存のカリキュラム、コンテンツでも企業の業界や職種年次に合わせて伝え方やワークの内容、タイムテーブルを毎回見直し、変更をかけます。何百回と実施したコンテンツであっても、必ず前日に、実際の場をシミュレーションしながら、1つずつ話す内容を改めて考えます。受講者にとっては、一日や二日で、しかも初めて受ける内容なので、その時のアウトプットが全てなのですが、少しでも役に立つものをと考えたら、止まらなくなってしまう訳です。(実際、それでコンテンツは進化し続けるので、いいのですが)

 しかし、経営目線からすると、夫の気持ちも非常に分かります。どこかで歯止めをかけないと永遠に作り込みは可能です。このバランスが難しいところ。
 番組では、先程の会話の後も妻は結局作り込みを続け、それが高校生とのやり取りの中で、クラス全員から驚嘆の声があがるくらい、とてもいい反応になっていました。結果オーライです。高校生に喜んでもらえて、とても良かったというところではありますが、これを経営視点でどう評価するべきでしょうか。

「よりいいものを」は作り手やサービスの提供者として、当然のこと。しかし、趣味や創作ではなく、ビジネスとして捉えるなら、費用対効果を考えることも大切です。また、人(質の高いアウトプットを出す人とそうでない人)、コンテンツ(興味があるものなので作りこんだ)や期間(時間に余裕があったので質のいいものができた)によってバラつきが出ないことも。そのあたりをしっかりと考えておく必要があります。



3.こだわり過ぎる人、全くこだわらない人は悪いのか?




 では、同じ業務を行っているのに、メンバーによって早く終わる人と時間がかかり過ぎる人がいます。こだわり過ぎる人、全くこだわらない人、どちらも問題視されることが多いですが、そうでしょうか。この点に対して、意欲や常識を引き合いに出して個別指導を行っても、納得感を持たれないケースが非常に多いです。

 こだわるメンバーの「自分は一生懸命やっている」、「お客様のために」という考え方は頭ごなしに否定できません。また、こだわらないメンバーの「効率を」「費用対効果を」という考え方も否定できません。そして、この二つは相反する関係にあるため、「何であの人は…」となり、冒頭に述べた経営問題の「従業員のモチベ―ション」「人間関係」にも悪影響を及ぼすことにもなります。経営者と従業員、管理職と部下がこのような相反する考え方の元に働いていると、お互いに悪気はないにも関わらず関係性が悪化したり、モチべーションが下がったりします。

 問題は、「それを行っているヒト」ではなく「根拠となる基準がない、もしくは明示していないこと」にあります。その場合、捉え方によって、どちらも正しいとなるからです。基準がなければ、根拠がないため互いの主観のやり取りにしかなりません。



4.パフォーマンス向上、生産性向上、不要なストレス回避のために軸や基準を設けよう



 そこで、ある業務やタスクに対して軸や基準をつくるということが大切になります。例えば、

1.各業務の規準(適正時間、適正レベル)を決める
2.規準設定の難易度が高い場合(クリエイティブ、企画関連業務)は、いつまでという期限を最初に決めた上で、その時間の中で最大限やりきる

といったことを共通認識として落とし込んでいくことです。もちろん、言葉で認識できる場合のみではないため、共有しながら見てコミュニケーションを取って学んでいくという形で時間をかける必要があります。

 規準が明確になると、育成や評価もしやすくなりますし、適正に標準化されることで生産性向上、業績向上にもつながります。働き方改革、テレワークでの評価など、パーツパーツで議論される問題・課題が一貫性をもった中で解決に向かっていきます。不必要なストレスがかからなくなるため、モチベーションや人間関係も良くなっていくでしょう。



5.未来を見据えた軸の設定




 どこまで工数をかけるのかは、費用対効果以外に、未来軸でもみておく必要があります。
 研修業を事例に出すと、今、テレワークの行い方やツール紹介のセミナーが全国で頻繁に行われているが、これは一過性のもので、一年も経って浸透すれば当たり前になり、セミナーのニーズはぐっと下がります。今ニーズがあるからと飛びついても、人員やお金に余裕のある大手には勝てない中、瞬間的なビジネスに投資をするのが果たして是か非か、と考える必要があります。

 一方、オンライン研修、オンラインワークは、これから当然になります。しかし、一般的な管理職研修や新入社員研修がオンラインでできるとしたら、全国の大手企業や著名な講師のコンテンツが優先される可能性も高いはず。とするとコンテンツなのかフォロー体制なのか、何がしかの差別化が必要になりまう。どこに投資をするかを決めてから動かなければ、ムダになりかねません。

 同様のことは、景気のいい悪いあれど、どの業界にもあてはまることです。経営者、管理職は、自分の考えや方針に従業員やメンバーを巻き込むわけですから、真剣に考える必要があります。

 バブル崩壊、リーマンショック、震災による景気悪化、そして新型コロナ。大きな変革を伴う中で、ビジネスモデルをどうするか、業務フローをどうするか、各業務への工数・投資の仕方はどうするかを経営、マネジメント層は考える。その上で、適切な業務遂行で従業員や関わる人材がストレスなく最大のパフォーマンスを発揮できるように、軸を決めていきましょう。



中小企業の経営、業績、ヒト、組織の課題をワンストップで解決
業績向上プログラム「おしえる」確認